相続
空き家の相続放棄|3か月の期限と、放棄したあとに残る管理の責任
結論
- 空き家の相続放棄は、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所に申述します。費用は収入印紙800円と郵便切手です。
- 放棄すると、空き家だけでなく預金なども含めて一切を引き継がなくなります。空き家だけを選んで放棄することはできません。
- 放棄したあとも、その時に空き家を現に占有している人は、次の相続人か相続財産清算人に引き渡すまで、空き家を保存する責任があります(民法940条)。
この記事の目次
空き家の相続放棄とは
空き家の相続放棄は、家庭裁判所に申述して、亡くなった人の財産を一切引き継がないことにする手続きです。相続放棄をした人は、初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。
相続放棄は、空き家だけを放棄する手続きではありません。空き家のほかに預金や株式があっても、それも含めてすべて引き継がなくなります。そのかわり、借金などのマイナスの財産も引き継ぎません。
ポイントは、空き家の相続放棄は「空き家がいらないかどうか」ではなく、「財産全体を引き継ぐかどうか」で判断することです。空き家以外にまとまった預金があるなら、相続して空き家だけを売る・国に引き取ってもらう方法も比べる価値があります。
空き家の相続放棄の期限は3か月
空き家の相続放棄の期限は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です(民法915条1項)。亡くなった日からではなく、自分が相続人になったことを知った時から数えます。
財産の調査に時間がかかって3か月では決められないときは、期限内に家庭裁判所に申し立てると、期間を延ばしてもらえることがあります。
放棄の前にしてはいけないこと
相続放棄をする前に、空き家や家財を売ったり、取り壊したりすると、相続を認めた(単純承認した)ものとみなされ、放棄できなくなるおそれがあります(民法921条)。雨漏りを応急処置するなど、財産の価値を保つための行為は認められていますが、どこまでが許されるかは状況で変わります。空き家に手を入れる前に、家庭裁判所か弁護士・司法書士に確かめるのが安全です。
空き家の相続放棄の手続きと費用
空き家の相続放棄は、亡くなった人の最後の住所地を担当する家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を出して行います。裁判所の案内では、必要なものは次のとおりです。
| 必要なもの | 内容 |
|---|---|
| 申述書 | 裁判所のページに書式がある |
| 収入印紙 | 800円分(申述人1人につき) |
| 郵便切手 | 裁判所ごとに金額が違う |
| 亡くなった人の住民票除票または戸籍附票 | 最後の住所を確かめるため |
| 申述する人の戸籍謄本 | 相続人であることを確かめるため |
| 相続の順位に応じた戸籍 | 配偶者・子・親・兄弟姉妹のどれにあたるかで追加の戸籍が変わる |
申述が受理されると、家庭裁判所から通知が届きます。受理されたあとは、原則として撤回できません。
空き家を相続放棄したあとの管理の責任
空き家を相続放棄しても、すぐにすべての責任がなくなるとは限りません。2023年4月1日に施行された民法の改正で、放棄したあとの責任の範囲がはっきりしました。
いまの民法940条1項では、相続放棄をした人は、放棄の時に相続財産を現に占有しているときに、相続人または相続財産清算人に引き渡すまでの間、自分の財産と同じ注意をもってその財産を保存しなければならない、とされています。
- 亡くなった親と空き家で同居していた、鍵を持って出入りしていたなど、空き家を現に占有していた人は、引き渡すまで保存する責任があります。
- 空き家に住んだことがなく、管理もしていなかった人は、この保存の責任を負わないと読めます。
「現に占有している」に当たるかどうかは、個別の事情で判断されます。自分が当たるか迷うときは、弁護士・司法書士に確かめてください。
相続人が全員相続放棄した空き家はどうなるか
空き家の相続人が全員相続放棄すると、次の順位の相続人に相続の権利が移ります。子が全員放棄すれば親へ、親がいなければ兄弟姉妹へと移ります。相続人が誰もいなくなった場合の流れは次のとおりです。
相続財産清算人の選任を申し立てるには、収入印紙800円、郵便切手、官報公告料5,582円がかかります。さらに、清算人の報酬を含む管理の費用が財産から出せない見込みのときは、申立てた人が予納金を納めることがあります。予納金の額は裁判所が事案ごとに決めます。
空き家を現に占有していた人が保存の責任から離れるには、清算人に引き渡す必要があります。そのため、放棄した人が自分で清算人の選任を申し立てることもあります。
空き家の相続放棄とほかの方法の比べ方
空き家の相続放棄は、財産全体を引き継がない強い方法です。空き家だけを手放したいなら、次の方法も比べて決めるのが安全です。
| 方法 | 空き家以外の財産 | 費用の目安 | 向いている場合 |
|---|---|---|---|
| 相続放棄 | 引き継がない | 収入印紙800円など | 借金が多い、財産を何も引き継がなくてよい |
| 相続して売る | 引き継ぐ | 仲介手数料、解体費など | 買い手がつきそう。3,000万円特別控除が使える場合もある |
| 相続して国庫帰属制度を使う | 引き継ぐ | 解体費、審査手数料1筆14,000円、負担金 | 売れないが、預金などは引き継ぎたい |
相続して売る場合の特例は相続空き家の3,000万円特別控除で、相続したときの期限の全体は空き家の相続でまずやることで説明しています。
費用・期限・数字のまとめ
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 期限 | 相続の開始を知った時から3か月以内(延長の申立てができる) | 民法915条 |
| 申述先 | 亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所 | 裁判所 |
| 費用 | 収入印紙800円(申述人1人につき)+郵便切手 | 裁判所 |
| 効果 | 初めから相続人にならなかったものとみなす | 民法939条 |
| 放棄後の保存の責任 | 放棄の時に現に占有している場合、引き渡すまで保存する | 民法940条(2023年4月1日施行の改正後) |
| 相続人がいないとき | 相続財産清算人が清算し、残りは国庫へ | 民法952条・959条 |
| 清算人選任の申立て費用 | 収入印紙800円、郵便切手、官報公告料5,582円(予納金が必要な場合あり) | 裁判所 |
よくある質問
- 空き家だけを相続放棄できますか?
- できません。相続放棄をすると、空き家だけでなく預金なども含めて一切の財産を引き継がなくなります。
- 相続放棄をすれば空き家の管理をしなくてよいですか?
- 放棄の時に空き家を現に占有していた人は、次の相続人か相続財産清算人に引き渡すまで保存する責任があります。空き家を占有していなかった人は、この責任を負わないと読めます。
- 3か月を過ぎたら相続放棄はできませんか?
- 原則としてできません。財産の調査に時間がかかるときは、3か月以内に家庭裁判所に期間の延長を申し立てられます。
- 相続放棄の前に空き家の片付けをしても大丈夫ですか?
- 家財を売ったり処分したりすると、相続を認めたものとみなされて放棄できなくなるおそれがあります。手を入れる前に家庭裁判所か専門家に確かめてください。
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出典
この記事は次の一次情報をもとに書いています(2026年9月時点)。
この記事は2026年9月時点の法令・制度をもとにしています。税金・登記・補助金の扱いは個別の事情と年度で変わるため、最終的な判断は税理士・司法書士・市区町村の窓口に確認してください。詳しくは免責事項をご覧ください。